神秘の植物 黒ガリンガル発掘物語 その6

転落──どうしてこうなるの?

苦労に苦労を重ね、やっとの思いで手にした種芋。その種芋を、もうひとつの宝石──黒コショウを作っている広大な農園で栽培しようと試みました。

日本の最高の農業技術を駆使すれば、もっと良質な黒ガリンガルが出来るに違いない。日本から農業技術者を招いて農園を改良しました。良質の有機肥料を与え、スタッフが毎日雑草を取り、水もタップリと与えて、大切に大切に育てました。

すべてが順調に見えました。

黒ガリンガルの葉は、自生地で見たよりも青々と勢いよく茂り、手応え充分。これならば期待以上の収穫量が見込める。毎日毎日、その姿を見ることが喜ばしい日課になっていて、幻の植物の大発見者として讃えられる、輝かしい未来の姿が目に浮かんできます。黒ガリンガルの葉が青々と育つほどに、夢も大きく膨らんでいきました。

そして一年後、夢は・・・水泡に帰す・・・・・結果となりました。

勢いよく青々と茂った葉。地面の下では、大きく育った黒ガリンガルが・・・ひとつもなかったのです。

茫然自失。ことばを失い、ただ茫然と立ち尽くすばかりです。全身の力が抜けて、もはや立っていられずに、座り込んでしまいました。

この時、インディS氏の脳裏に、フッと閃くものがありました。キッカケをつくってくれたスタッフのひとことです。

──ある地域でしか育たない凄い薬草──

幻には幻なりの理由があったのです。

いくら門外不出とはいえ、1200年以上もの間、誰も持ち出さなかったとは考えにくい。危険きわまりないとはいえ、自生地もある。近隣の部族から部族へと少しずつ噂は広がり、自分たちのところでも栽培を試みた可能性の方が高いのではなかろうか?でも、栽培できなかったと。

最悪の収穫日から数日後、懲りない男インディS氏は、またしてもガタガタの山道を毎日何時間も揺られて、秘境地帯の民の元へと向かって行きました。